取組み内容

宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』には、高度に発達した科学技術文明の「後の世界」が描かれている。なるほど人類は存在し続け、科学技術の残滓と中世的な生活様式が結びついた、今とは別の文明がそこにはあるが、「前の文明」によって破壊し尽くされた自然環境は劣悪を極め、現在われわれが目にしている自然の姿は、そこにはない。

SDGsは、経済、社会、環境の各分野の持続可能な開発を、統合的に実現するための目標を掲げるものだが、この中には膨大なエネルギーを使用する「経済活動」の持続的な開発も含まれている。このことの意味を、われわれは今真剣に考える必要がある。

現代文明の行く末に、私自身はかなり悲観的だ。産業革命以後に人類が地球に与え続けた負荷の総量は、すでに地球環境が持つ自己再生能力の限界を越えている、と私は考えている。われわれの文明を支えている地球の自然環境が、今後も、これまでと同じ状態を保つことは、もはや不可能ではないだろうか。だから私のゼミや講義でも、如何に環境破壊を防ぐかではなく、汚染や気候変動によって激変した自然環境の世界で、如何にして人類は生き残ることができるのか、というテーマに力点が移り始めている。

「前の文明」が破壊した森にたたずむナウシカ
「経済活動」の持続的な開発は、膨大なエネルギーを使用し、エントロピーを増大させる
ゼミ合宿で自然環境の価値を実感する学生たち