取組み内容
●研究活動を通じた取り組み:死について向き合うための講演活動
新型コロナウイルスによって多くの人が亡くなるのを目の当たりにし、死は誰にとっても例外なく訪れるという事実に動揺した1年だったのではないでしょうか。私が研究対象としている病院という場所は、現在の日本人の8割近くが臨終の時を迎える場所です。それにもかかわらず、病院の中で徹底的に死は隠されます。医療従事者が大変忙しいこともあり、患者や家族が抱える死への恐怖や哲学的問いかけを十分に受け止められる体制にはなっていません。本来であれば死とは、与えられた命を全うし、「ありがとう、お疲れさま」と送り出すべき出来事なのに、現状はあまりに哀しいのではないでしょうか。
ある病院が、死について日常から考えることをテーマにした絵本を創ったことをきっかけにシンポジウムを開き、私も「死から目を背けることで私たちが失うもの」という講演をさせていただきました。医療従事者は自然科学から見た「死」についてのプロフェッショナルです。そこで私は社会科学や人文科学から見ると「死」はどのような意味を持つのかということを投げかけ、一緒に考えていただきました。
病院は人が生まれ、大きな人生の転換点を迎え、そして天国へ旅立つという、非常に重要な出来事が起こる唯一無二の不思議な場所です。病院経営の研究と同時に、「人生にとって病院とはどんな場所なのか」というテーマも掘り下げてゆき、病院関係者と、そして市民みんなと一緒に病院をもっとよい場所にしてゆけたらと願っています。