取組み内容

空き家問題は、世界の人口減少都市(写真①②)で発生しています。空き家化の要因は各国で様々ですが、核家族化が進んだ日本では、昔のように相続した実家に住むことが少なく、とりあえず空き家のまま置いておこうというケースが多いのです。更に時間が経つと、空き家の荒廃が進む(写真③)だけでなく、代替わりで所有者が多数化・不明化し、ますます空き家の活用や流通は困難となります。

地域で空き家が増えると、人口減少が加速化するだけでなく、街の魅力や価値までも低下させるため、次世代に多大な負担を強いることになりかねません。

そのため、現時点で高齢者だけで住む持ち家は、「空き家予備軍」としてとらえ、相続前の段階から、所有者やその相続予定者が住まいを円滑に責任ある所有者・利用者へ引き継ぐこと、いわば「住まいの終活」が社会の中で定着することが必要不可欠です。

筆者は、「住まいの終活」に関する研究や社会貢献活動と共に、その政策に関する教育を行っています。例えば、筆者が作成した「住まいのエンディングノート」(写真④)を活用し、自治体や民間企業・NPO等と連携しながら様々な地域で普及活動を進めています。

①アメリカのデトロイトの空き家(2018年筆者撮影)。 2013年に事実上の財政破綻をし、空き家が大量発生。空き家の放火、盗難、破壊が相次ぎ、空き家の荒廃化とともに、地域の治安悪化にも拍車をかけた。(近年は空き家の解体が進み、空き地が多い)
②窓の破壊や不審者が入らないようボードアップしたドイツのライプツィヒの空き家(2017年筆者撮影)。 東西ドイツ統一後、10年で約10万人もの人口が急減し、多くの集合住宅が空き家に。(近年は空き家の活用が進み、人口も増加に転じている)
③東京23区内の空き家(2019年筆者撮影)。立地もよく売却可能な場所だが、手つかずのまま荒廃が進行。ブロック塀倒壊の危険性があるため、自治体が注意喚起のためカラーコーンを設置、バス停も移動するなど周辺に悪影響を及ぼしている。
④筆者作成の「住まいのエンディングノート」 2018年12月に刊行した拙著『老いた家 衰えぬ街-住まいを終活する』(講談社現代新書)に収録。これをもとに、実際に「住まいの終活」に取り組む自治会、まちづくり組織、自治体、民間企業等が増えている。