取組み内容
日本の中・近世は男性優位社会であり、なかでも武家の系図は男系で記され、女性は「女」のように個人名を排除されています。しかし、私が専門とする古代においては、女性の社会的地位が高かったことが知られています。
例えば平安時代の仏教説話集には、郡司の妻が、夫とは別の家産や生業を持ち、それを運用して稼いでいる話が載せられています。福島県出土の奈良時代の木簡には、郡司の命を受けた里の有力女性が、男たちを集め、田を耕作させたことが書き残されています。
大きな古墳にも女性が葬られる例があり、なかには経産婦もみられます。お母さんも地域を治める王になりえたのです。近年では、栃木県の古墳から立派な女性埴輪が出土し、機織りをする様子が表されていました。人物埴輪は、古墳の主の生前の治世を顕彰したものです。この古墳の主は布生産を司る機織り集団の長だったのでしょう。特産の布を生み出す集団の長としての誇りがこの埴輪に表されていたと考えられます。
このように、生き生きと活動する古代女性の姿を資料・史料から描き出し、授業や講演会、著作で学生や社会の皆さんに伝えています。