取組み内容

社会が災害をどのように捉え、そして対応してきたかについて研究をしてきました。災害の多い日本において、防災・減災という形で多くの方が災害と向き合っていますが、同時にそのほとんどは迅速な避難、物資の備蓄、ボランティアとしての支援など、身の回りのこと、災害後に機能が低下した社会を生き延びることに集中しています。

しかし、災害はヴァルネラビリティ(脆弱性)、たとえば弱者に対する配慮の不足、多様性への無理解、格差の拡大といった社会の脆い部分を基点として被害を集中的にもたらすことが知られています。このような被害を防ぐため脆弱性の改善が指摘されるとともに、近年ではレジリエンス(回復力)という、災害の被害を受けてもそれを柔軟に受け止め、社会の機能を維持・回復させていく力が重要視されています。

筆者は、たとえばこのような取り組みの1つとして「災害復興」のあり方や、「災害の記憶」がどのように扱われているかを東日本大震災の被災地などで調査しています。前述のような災害後を生き延びるということを超え、より長期的に社会の持続可能性を考えるという点で、ヴァルネラビリティ(脆弱性)やレジリエンス(回復力)という考え方は重要性を増しています。

① 宮城県気仙沼市小泉海岸の防潮堤。津波からの安全か、自然との共生か、東日本大震災からの復興では防潮堤のあり方が焦点となった。
② 宮城県仙台市南蒲生地区の集会所。地域の拠点を創るため、震災後に地域住民の方々が尽力して建設計画を進めた。
③ 岩手県陸前高田市の高田松原津波復興祈念公園。献花台からは平穏な海と同時に、津波被害から再生中の高田松原を見下ろせる。
④ 宮城県女川町の旧女川交番跡。建物が基礎ごと横倒しになったまま、震災遺構として保存されている。再建後の町並みの一部として、町の経験を伝えている。