取組み内容

塩分のとり過ぎは、高血圧・慢性腎臓病など生活習慣病の発症や重症化を招きやすく、健康に関する社会課題となっています。日本人の1日あたりの食塩摂取量は成人男性で10.9g、成人女性で9.3g。生活習慣病の重症化を予防するには1日6.0g未満の食塩摂取量が望ましいと考えられています。ではあなたは、普段の食事から塩分を減らせますか?減塩食は「味が薄い」と感じる方も少なくありませんが、それを我慢できますか?

宮下研究室は、味の感じ方を変化させる電気味覚食器の研究を10年以上行っています。人体に影響しないごく微弱な電気を用い、塩味の基となる塩化ナトリウムやうま味の基となるグルタミン酸ナトリウムなどが持つイオンの働きを調整し、疑似的に食品の味を濃く感じさせることができます。実際に減塩の食生活を行っている方を対象に臨床試験を実施し、減塩食を食べた際に感じる塩味が1.5倍程度に増強される効果を確認しました。

このデバイスは、キリンホールディングスによって社会実装がすすめられています。濃い味を美味しく味わう楽しみと、身体の健康は、テクノロジーによって両立可能なのです。

箸型の電気味覚食器。腕に装着したコンピュータで電気刺激を制御し、塩を足さずに味を濃く感じさせます。

減塩味噌汁では、塩味の増強効果が確認され、コクやうま味、全体のおいしさも向上します。
宮下研究室で開発した電気刺激波形
電気刺激を付与したときの減塩食を模したサンプルの塩味強度は、一般食品を模したサンプルと同等であることを確認