取組み内容

野生の動物は餌不足の環境で生きている。例外的に人類は農業技術等で凌いできたが、食糧増産はそろそろ限界である。ところで現代の先進国における食料問題の本質は、飽食による栄養不良にある。肉の過食による肥満・過体重が生活習慣病を引き起こしているのだ。畜産には大量の穀物・豆類が使われるので、肉の過食はそれらを無駄にしている側面もある。肉に代えて穀物・豆類を食べるようにすれば、食糧増産ができなくても食料問題は解決へ向かうだろう。しかし経済力のある人が皆そのように動くとは限らない。

実は先進国では日本だけに過食傾向がほとんどない。これは日本の魚や大豆をおいしく食べてきた文化のおかげである。そこで最近、大学院生や商学部生と次の研究に取り組んでいる。

【すしダネの研究】すしには食欲を抑えるヒスチジンを含む魚が使われている。すしはおいしいので世界的に人気上昇中だが、魚の需給に懸念があるので、その持続可能性に関する研究をしている。

【大豆メニューの開発】肉に匹敵する栄養のある大豆を欧米人は食べていない。そこで商学部の特別テーマ実践科目「SDGs調理科学」の授業で大豆をおいしく食べられる新メニューの開発をしている。

江戸時代(左:日本橋「吉野鮨」所蔵の絵より)と令和時代のすし(右:同店にて2022年9月撮影)。同じ店のすしでも百数十年を経て変化してきたことがわかる。すしタネに使われる魚介類の供給の持続可能性をフードシステムの面から検討中である。
商学部特別テーマ実践科目「SDGs調理科学」で、商学部生とともに大豆を材料にしたおいしい新メニューの開発をしているようす(2021年8月撮影)。
新メニューの開発では、おいしくないと意味が無いので試食を必ずして官能評価をしている。これらは官能評価に供する「大豆ミートを使ったメンチカツ」の調理作業(左)と官能評価前の準備をしたところ(右)(2022年7月撮影)。